「…アイツはいいのに…。
あんなに女遊びが激しいヤツはいいのに…、僕じゃ、ダメなんですかっ!?」


何を言い出すかと思えば。


「そんなこと、か」

あたしは彼に聞こえないように呟いた。


「キス魔とか呼ばれてようなヤツですよ!?…だから…っ…」


今、この男の口は、悠の悪事を叩くためだけに動かされている。


考えてみれば、悠は誰かを悪く言ったりなんて滅多にない。

なんてったって。
悠の口は、キスをするためにあるのだから。


なんて、喋りを止めない彼をぼーっと見ながら、思う。