「私は何も言っていないわ。ただあなたたちの宴を控えて欲しいとお願いしようと思っていただけよ」
「それが余計なことだっていってんだよ！」
　カオリの怒りが頂点に達した。
　だが、理恵は怯まなかった。
「一体何故、あなた達は毎晩ここで騒いでいるの？」
　理恵の言葉は冷静そのものだった。その様子を見てカオリの怒りも少しずつ治まってきている様だった。
「何故って、あの子を一人には出来ないからだよ」
「一人に出来ないって、ここに勇作がいるじゃない」
「こいつは生きているんだ。仕事もある。夜は眠らなきゃならないだろう？その間、あの子はどうするんだい？」
　理恵は暫く考え込む様に俯いた。ル差という幽霊は極端に独りを嫌う様だった。今夜ここにカオリという浮遊霊をよこしたのはきっとリサの仕業だろう。カオリを怒らせ、理恵が考えていたことを駄目にしようと思っていたのだろう。自分の思う通りに出来ないとどんな手を使ってでも妨害しようとする。孤独でない状態を維持するためにはどんな手も使う。どうやらリサにはそれが極端に出てしまう様だった。
　そこまで考えた時、理恵の中に一つの仮説が生まれた。
「あの子が独りで名狩ればいいのね。あなた達と一緒にいられればいいのね？」
「そうだ、夜の間一緒にいられればいい。」
「その代わり、騒がないのよ。約束できる？」
「ああ、騒がない。約束する」
「それなら私の診療室にいなさいよ。夜の間は誰もいないから」
　理恵はそう申し出て、カオリはそれを了承した。