Forget me not~勿忘草~

初めてアイツと出会ってからはもう一年が過ぎたというのに…



「振袖新造だから」などと言う気はない。



(ふん、総司じゃあるめえし…)





手を伸ばせば頬を染めて寄り添い、顎をすくえば恥らって目を伏せる…



慕われているという自惚れはあった。



…少なくとも、嫌われちゃいねえだろう。







あの瞳だ。




無垢な童女のように澄んだ瞳で見やがって。



その瞳に恥じるようなことをしたくない。



どこまでも守って、慈しんで、大事にしたい…と




そう思うのに




次の刹那には艷めいた情婦のように瞳の色を変えて



俺を挑発し、篭絡(ろうらく)する。




(しかもそれを自然にやりやがるから手に負えねえんだ…)





大事なのに…めちゃくちゃに壊してしまいたい繊細なガラスの細工のようだ。





チッ…




重い足取りを誰の眼にも触れさせたくなくて、



無理矢理に足を速めた。


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ドクンッドクンッと心音が高まるのを感じながら…




身の内に起きた衝動に突き動かされるように



指先を伸ばして、そっと◯◯さんの頬に触れていた。




(うわぁ…すべすべしてる…)




僕の腕にすっぽり収まった◯◯さんは黙って目を伏せたまま…



したいようにさせてくれてるみたい。




調子に乗って…ちょっと顔にかかった髪を、そぅっと肩に流す。



絹糸みたいな髪に触れて、ゾクリと身体が粟立った。





なんだか◯◯さんからは甘い匂いが立ち篭めているようで



もっと近づいて…もっと触れたくて…




でもずっとこのまま、抱いていたいような…そんな気持ち。