「…ホントに?」
もうヤケクソで適当に言った言葉に、◯◯さんが顔を上げる。
涙で烟(けぶ)ったような瞳がウルウルしてて…宝石みたいに光ってる。
お酒のせいか、頬は桃色に上気して…ホントの桃みたいだ。
ちょっと見惚れてしまいそうになったけど、
コホンッと咳払いをしてもう一回言う。
「はい!死ぬまでちゃぁんと生きてますから、大丈夫ですよ」
ニッコリ微笑んでみせると、◯◯さんの顔がパァッと笑顔に変わった…
「良かったぁ…」
そう言うと、また胸に頬を寄せてくる…
―すごい…花が一気に咲いたみたいな笑顔だった。
ドクンッと動悸が早まったのがわかった。
鋭い居合の一太刀を、間一髪でかわした時みたいに
自分の胸がドクン、ドクンッと高鳴っている。
僕が剣を交わらせていて、一番好きなこと。
それはこの感覚。
―生きてるって感覚。
それを僕に齎(もたら)したのがこの女の子。
僕の腕の中で、安心した猫みたいに丸くなってる女の子。
剣も持たず、ただ微笑んだだけで…
―いったい僕はどうしちゃったんだろう…
************
―どうもいけねぇ…
屯所に戻る道すがら…
揚屋に残してきた総司と◯◯が気になっていた。
―まさか奥手の総司が振袖新造に手を出すとは思えねぇが。
大丈夫と判断したから出てきたのに、今更戻るのもバツが悪い。
(◯◯が絡むと俺の判断もアテにゃならねぇな…)
フッと苦い吐息が漏れた。
どうにも分が悪い。
小娘と思って侮ると、いつの間にか俺の心の隙にスルリと入り込んで…
無防備に、真っ直ぐに入ってくるのに、戸惑うのは俺の方だ。
オタオタと振り回されるなんざぁ、らしくねぇとわかっちゃいるが
事実、一回りも年若い◯◯が気になって仕方ない自分が居る。
―抱いちまえばいいんだ。
アイツのすべてを、この腕で抱いて蕩かして己のものにしてしまえばいい。
俺しか見えない、俺しか欲しがらない女に体ごと作り替えてしまえばいい。
他の男に気を揉むくらいなら、いっそ抱けばいい…
―なのに何故俺はそうしない…
もうヤケクソで適当に言った言葉に、◯◯さんが顔を上げる。
涙で烟(けぶ)ったような瞳がウルウルしてて…宝石みたいに光ってる。
お酒のせいか、頬は桃色に上気して…ホントの桃みたいだ。
ちょっと見惚れてしまいそうになったけど、
コホンッと咳払いをしてもう一回言う。
「はい!死ぬまでちゃぁんと生きてますから、大丈夫ですよ」
ニッコリ微笑んでみせると、◯◯さんの顔がパァッと笑顔に変わった…
「良かったぁ…」
そう言うと、また胸に頬を寄せてくる…
―すごい…花が一気に咲いたみたいな笑顔だった。
ドクンッと動悸が早まったのがわかった。
鋭い居合の一太刀を、間一髪でかわした時みたいに
自分の胸がドクン、ドクンッと高鳴っている。
僕が剣を交わらせていて、一番好きなこと。
それはこの感覚。
―生きてるって感覚。
それを僕に齎(もたら)したのがこの女の子。
僕の腕の中で、安心した猫みたいに丸くなってる女の子。
剣も持たず、ただ微笑んだだけで…
―いったい僕はどうしちゃったんだろう…
************
―どうもいけねぇ…
屯所に戻る道すがら…
揚屋に残してきた総司と◯◯が気になっていた。
―まさか奥手の総司が振袖新造に手を出すとは思えねぇが。
大丈夫と判断したから出てきたのに、今更戻るのもバツが悪い。
(◯◯が絡むと俺の判断もアテにゃならねぇな…)
フッと苦い吐息が漏れた。
どうにも分が悪い。
小娘と思って侮ると、いつの間にか俺の心の隙にスルリと入り込んで…
無防備に、真っ直ぐに入ってくるのに、戸惑うのは俺の方だ。
オタオタと振り回されるなんざぁ、らしくねぇとわかっちゃいるが
事実、一回りも年若い◯◯が気になって仕方ない自分が居る。
―抱いちまえばいいんだ。
アイツのすべてを、この腕で抱いて蕩かして己のものにしてしまえばいい。
俺しか見えない、俺しか欲しがらない女に体ごと作り替えてしまえばいい。
他の男に気を揉むくらいなら、いっそ抱けばいい…
―なのに何故俺はそうしない…
