Forget me not~勿忘草~

―みんなが笑ってる…



木漏れ日を感じるようなあったかい午後。


土方さんは縁側で…俳句を作ってるのかな。



フフッ、ひとり難しい顔しちゃって…後で絶対見せてもらっちゃおう!




秋斉さんは、私が淹れた渋めのお茶を飲みながら土方さんにちょっかいを出す。



「時間かけたらエエもんが出来るわけやおまへんで」




「…黙っててもらおう」





高杉さんは慶喜さんと碁を打っている。



口をへの字に曲げて…どうやら彼のほうが劣勢だ。




「おや?そんな手でいいのかい、悪いねぇ」



慶喜さんは優美な微笑みを崩さずに、高杉さんを追い詰める。




「ちょ、ちょっと待て!今のはナシだ!」



これは後で高杉さんのご機嫌を直しに行かないとなぁ…





「―で、どないしまひょ、この猫の名は…?」



枡屋さんが柔らかい声で私に話しかける。



拾ってきた仔猫を腕に抱きながら…




「あんさんの名をつけてもよろしおすか?わてがちゃ~んとお世話しますよって」



そう言って目を細めると端正な顔を仔猫に摺り寄せる。




照れくさいような気持ちで、私はそれに微笑みを返す。





ガハハッと龍馬さんの笑い声が響く。



翔太くんの頭を小突いて



「そりゃあ、ほんにわしが言うたんかのう?新しい日本の夜明けじゃきっち…」




「イテテ、そうですよ。龍馬さんのセリフですって」



翔太くんは小突かれながらも嬉しそうに龍馬さんの傍を離れない。




「まっことええセリフじゃ!気に入ってしもうたわい」




太陽みたいに明るい、晴れやかな笑顔を向けながら



龍馬さんが大きな声で私に呼びかける。



「のう◯◯!尊皇派も佐幕派もない。身分差別もない。日本人の為の、新しい日本の夜明けじゃき」





そうだ。そんな時代がやっと来たんだ…



もう戦わなくていい、傷つけ合わなくていい。



みんなで笑って、優しくしあってもいい…そんな時代が…やっと。





ふわり、と優しい風が頬を撫でる。




軽やかに、透明に…みんなの笑顔を喜ぶように優しい風が通り抜ける。




慕わしい人に名前を呼ばれたように、その風を追いかけたくなって…


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