「え?」


思いがけない言葉に私は思わず振り返り、
こうちゃんの顔を見た。



「転勤で、また東京へ戻る。

だからその前に、どうしてもユイと会っておきたくて。


…でも、それは俺の勝手なわがままだった。
ごめん、ユイに嫌な思いをさせちゃって。」



私は言葉が出なかった。


5年ぶりにやっと会えたのに、またこうちゃんはいなくなってしまう。


どうして、あなたはいつも私の前からいなくなるの?



「…わかった。

もう、いいから帰って。」


何をどうしたらいいのかわからずに、私はこうちゃんを拒否することしかできなかった。



うしろを振り向かずに、改札口を抜けた。




遠くから、
『サヨナラ』という声が
聴こえた気がした。