記憶 ―砂漠の花―


確かに、昨夜のバルコニーでの会話も以前通りにはいかなくて、上っ面の会話にしかならなかった。

だけど、なぜか、
今は以前の様に冗談を言いながら話せる。


「多分、アイリ事実を受け入れたんだ。俺の気持ちに答える事は、まだ『困る事』なんだけど、俺がアイリを好きって事には抵抗なくなった。違う…?」

アズは立ち上がり、私の顔を覗き込んで首を傾げた。

思わず、一歩下がる。
自分の顔が赤くなったのが分かる。


「当たり…かなぁ…」

「よしっ!開き直って良かった、俺!」

小さく拳を握りしめた。


「アイリ、俺の気持ちに答えられないからって、言葉や行動に遠慮が出てたんだと思うんだけど、全っ然気にせず今まで通り甘えてくれていいからな?…その方が嬉しいし…。」


なんで、アズは私の事分かるんだろう。
自分でも分からない不安定な気持ち。
アズに言われて、いつも気付く。

以前通りに甘えていいのか、
気持ちに答えられないのに、甘えていいのか…、
私は確かに控えめになっていた。


「なんで、分かるの?って顔してるね…。」

きょとんとアズの顔を見ていると、驚いた様に呆れながら立ち上がり、私の頭を撫でた。