しかし、サザエル国海域を囲むバリアをみて分かる様に、国王は用心深い。
キースの母を再び人質にとり、キースに命じた。
ラルファ国の、
次期国王の暗殺を…。
キースが、暗殺者だという事実に、私たちは信じられない思いで一杯だった。
「…嘘。…じゃあ、キースは父上の暗殺に失敗したの?」
「それで、捕まって狼に変えられたのか!?」
私たちのキースに対しての問いかけも、熱くなっていた。
「まぁ、大まかに言ってしまえば、そうだな。」
「細かく言うと…?」
「細かくか…」
キースは一つ大きな溜め息をつき、過去の罪をそれは辛そうに再び話し始めた。
暗殺を企てる者とは夢にも思わないラルファ国王は、キースをサザエルの使者として丁重にもてなした。
祖父や父上と食事も共にした。
手を伸ばせば、すぐ。
密かに忍ばせていた短剣を取り出して、父上に襲いかかる。
――手応えは、あった。
返り血も浴びた。
床一面が、赤く染まった。
しかし、その血は父上の物ではなかった。
父上を一瞬で庇い、刺されたのは母上、カルラさんだった。

