記憶 ―砂漠の花―


キースの話は…、

30年も昔の出来事から始まった。

まず、青年キースはサザエル国王に遣える側近の息子だった。


そこでキースは、

「元々は人間だったんだ。」

と、さらりと告げ、私たちを驚かせた。


サザエル国王が替わった。
やはり前国王が亡くなり、娘がその座を継いだのだ。


そこから、サザエルは狂い出した。

元々、ウィッチも多く魔術の栄えた国であったが、国王の意向で魔術があらぬ方向へと向かっていく。


他の国への侵略や、戦争行為を行う軍事国家と姿を変えていき、それに意見した側近であったキースの父は、反逆罪として死刑罰となった。

不満を持つ全国民への、見せしめの意もあったのだろう。


それでも尚、残された母の為、とキースは父の後を継ぎ、国王の側近を続けた。

逃げ出せば母の命はない、と脅されていたからだ。



5年が経った頃、

サザエルの次の標的は、海辺のシオン国や砂漠のラルファ国へと向けられていた。


その頃のラルファは、丁度ウィッチ狩りの令が出されたばかりの時期。

国の内部も荒れ、祖父と父上の対立もあり、王家自体も荒れている状況だった。
侵略するのなら絶妙なタイミングである。