「もう寝よう。明日はサザエルに出発だ。」
サザエルはシオンから広い海を渡った島国であり、エッジ島、ゴザ島、サイル島の3つから成る。
昔はシオンとも船で行き来があったらしいが、戦後全くと言っていい程交流は断ち、船もない。
行き来するのは、先日情報をくれたような流れの行商人くらいなのが現実だ。
仮に船で海を渡るとしても、シオンとサザエルの2つの国の間の海域には見えない壁があるという。
多分、サザエル国が張ったバリアだと思うが、こっそり潜入となれば厄介だ。
「どうやってサザエルに入るかは、明日叔父様に相談してから出発だな。」
「うん。じゃあ、おやすみ。アズ。」
「あぁ、おやすみ。」
バルコニーから自分へ用意された部屋へと足を進める。
「あ…アイリ!」
アズの声に振り返る。
「いや、いい…。何でもない、おやすみ。」
「……おやすみ。」
明らかに何か言いたそうに私を見送った。
私はバルコニーに残るアズに軽く手を振り、部屋に入った。
あれ以来、
二人きりは、どうも気まずい。
溜め息をつきながら、部屋のベッドに目をあげると、
そこには、侵入者がいた…。

