記憶 ―砂漠の花―



「まぁ…そうだな。しかし戦前の話だ。もう時効であろう?キース。実はな…」

「お待ちください。」

あと少しというところで、キースが叔父様の声を止めた。


「今はまだ、お待ちいただきたい…」

「君の傷はまだ癒えないか。…君に任せるよ。」

「有り難うございます…。」

キースは表情を曇らせたまま、静かに頭を下げた。


「さぁ、食事だ!食事にしよう!」

叔父様がわざと明るい声でそう叫んだ。

私たちもそんな叔父様に同調して、食事に手を伸ばす。


「うん!美味しそうッ!」

「海が目の前だからな。魚は新鮮だ!たくさん食べなさい。」

そう皿を進める叔父様に、私は笑顔を向ける。

その裏側で、
私はつい先日の『今度詳しく答えてやる』というキースの言葉を思い出して確信していた。

おそらく、こうなる事を予測しての言葉だったのだろう、と。

何か深い事情がある。
無理に聞いちゃいけない…。


しかし、
キースが重い口を開くのは、それからすぐの事だった。