記憶 ―砂漠の花―



「お久し振りでございます。今回お二人のお供をさせていただいております。」

「…そ、そうか…」

叔父様に頭を下げるキースは、確かに『久し振り』とそう言った。
私とアズは顔を見合わせる。

シオン国王と狼。
二人の間には、何故か重々しい空気が流れていた。


叔父様はキースに向かって話し始める。


「何年…経ったかな…。その姿はマギーが?」

「はっ。」


「しかし私が見たところ完璧ではないだろう?」

「はい、次の新月が来れば元に戻ります。」

叔父様は、人間姿のキースを知っている様だった。


「君には悪いことをしたな…」

「いえっ、当然の罰だと思っております。」

私たちの知らないキースを叔父様は知っている。

首を傾げたままのアズが、横から会話に割って入った。


「罰!?叔父様、キースをご存じなんですか?」

「いや、何…。昔馴染みでな…?はっはっ…」

叔父様に笑顔が戻る。

「さぁ食事にしよう」と私たち三人の肩を押し、隣室に案内した。


叔父様もキースも、悲しい目をしていた。

これ以上聞いてはいけない事なのだと悟り、この件に関しては一度口を閉じた。