「ごめんなさい、興奮してしまって…。安心したわ、本当に。戦時中に捕らえられて、この島から出ていないものだから…」

ふふ…と悲しげに笑った。


「貴女のお名前は?」

「あの…私は…」

なんて答えれば良いのだろう。


――ザッ…

砂の音。
その音の主は、低いうめき声をあげながら起き上がろうとしていた。


「アズッ!!起きた!?起きて!カルラさんだよ!」

「…アイリ…。あれ、俺どうしたんだ…?」


再びカルラさんの心拍が感情が高ぶるのを感じる。

彼女は口を両手で押さえ、目を見開いていた。
ゆっくりとその場を立ち上がり、後ずさった。


「…ちょ…ちょっと待って…。いま、今、何て…?アズに…アイリと…?」


彼女の声が、震える。
体も震えている。


アズが完全に身を起こし、立ち上がる。
すでにカルラさんを視界にとらえていた。


「…母上…!」

「――っ!」

「母上なのですね…?」


アズがカルラさんへと手を差し伸べる。


「…これは夢?マルクの見せる幻ですか…?」

恐る恐る…何度も躊躇しながらその手に触れた途端、

彼女の綺麗な緑色の瞳から、
大粒の涙が溢れ、
頬を流れた。