「多分、マルクがそう呼んでた気がすりゅの…。…っ。女の人ともさよならして、最後にお城に帰った時に…、…っ。」

タビのしゃっくりが部屋に響き始めた。


「お前もご主人様の所へお帰りって、怖く笑ったにょよ…。うぅぅっ…バレてたにょかもしれにゃいの…。うぅ~…」


最後まで話すと、我慢の限界を越したのか、私の胸に顔を埋めて泣き出してしまった。


私たちは、揃って先生がどう対応するのか、大人しく様子を伺い待っていた。
タビの泣き声と、タビの背中を軽く叩く、なだめる音だけが、しばらく続いていた。


…怒るのかな?
充分に反省しているし、
可哀想に、一匹で今まで本当に不安で仕方なかったはず…。



「とにかく、お前が無事で何よりだ…。…おいで?」

先生は優しく手を差し伸べる。
それに導かれて、今度は先生の胸で泣き始めた。


「追っ手もないし、魔術による追跡もされてないな…。地下道の警報に何も引っ掛かってない。安心しなさい?」

先生がタビを撫でながら言った。


「わざと泳がされているという事か!?」

キースの問いに、おそらく、と頷いた。


「もう無茶するんじゃないよ?」

「ごめんなしゃい…」