『ちょっと!キース!僕、怒るよ!』

「…あぁ、悪い。」


私は、その様子にクスクスと笑いながら、一番後ろから一行について行く。


…何か、おかしいな。

確かに…、
アズが、ラルファ国民が、ウィッチでないからといって、
ウィッチ狩り以前は、少なからずラルファにも魔術の文化はあったはず。

父上を含む大人達には、それなりの知識があるはずだ。
父上の『ウィッチ人口を増やしたい』思いとは裏腹に、それが後世代に伝わってはいない。


過去の罪の意識から、人々は口を閉ざしてしまったのか。

何らかの理由があって、意図的に触れないようにしてきたのか。


「…ふぅ…。」

私は一つ溜め息をつく。


考えるの、やめよう。

ただ魔術が主流じゃないから、普段からあまり気にされていなかっただけ。
彼らの記憶から薄れていっただけ…。


私は、心に現れる矛盾に蓋をした。



街灯に照らされた道を一歩二歩と歩き出した時だ。

前を歩く彼らから、驚愕の声が発せられる。


「これは驚いたな…。」

「何これ、マジ!?」

「はぁ…すごいな…」

その少し前で腰に片手を当て、彼らを眺めて微笑む先生の姿。