「昨日の果実酒に魔術がかかっていたんだ。証は皆の胃の内壁だよ。アイリさんは…」


先生の血が、ウィッチへと変化するのを感じる。
外見も、黒髪に青い瞳へと変わってゆく。

その際に一瞬見せた、体から発する光は、緑色。
先程の岩の魔術の色彩と同じである。


「先生の『緑』色、さっきも思ったけど、綺麗ね…」

「…緑色?って何?アイリ。」

アズが私の後ろから、顔だけ覗かせ様子を伺いながら訪ねる。


「簡単に言うと、ウィッチの魔力の色?人それぞれに色があるの。ウィッチ同士にしか見えないと思うけど…。」

「ふぅん…」


「血に宿る魔力が動く時に生じる波動や気に、色が現れるのね?あと、その魔力が宿る物も同じ。だから、さっきの岩が消えた時も、私には岩に緑色が見えていたわけ。」

「俺、全然知らないんだな…、ウィッチの事。アイリの事…。アイリは何色なの?」

アズは一瞬険しい表情をしたものの、寂しそうに優しく微笑んだ。


表情を見ただけで、魔術なしにも、アズの心が伝わってくる。

『こんなにも、ずっと一緒にいたのに、情けない…。』と。