「そう、その証を付けられるのは私だけだ。…続けて?」
リオンさんは、私に目も合わさず、進路を見据えたままそう告げる。
「…ランプなしで均等に保たれている明るさも魔術によるもの。海水の水圧に負けない強度も、充分に岩に加えられている…。この水は…?」
そう…
上から滴り落ちてくるこの水は、海水ではない。
真水なのだ。
これも魔術によるものだろう。
でも…
真水は、何の為に…?
とりあえず、私は続けた。
「ここまでの魔術の使い手なら、もっと道を整備する事も可能なはずなの。逆に、こうしたかった。理由は…?」
理由が思い付かない。
利点がない気がする。
歩きにくいし、体力奪うし。
「何か理由があって、こう作っているんだけど…。とにかく、これ作った人、すごい!」
私は、地下道の天井を仰いでそう言った。
私もこんな事出来るのかな。
ここまで大きな魔術の作業は初めて見る。
「はい、ありがとう。…まさか、ここまで見抜かれるとは思わなかったなぁ。いくらウィッチでも、普通なら見抜けないよう作ったのにな…。」
え…?
リオンさんが何気なく口にした言葉に、私たちは驚いた。

