「…目が冴えちゃったか?」

アズが小声でそう聞いた。

「……うん…」


「お前が眠るまで起きててやるから、早く寝な…。」

そう言って私に腕枕をし、優しく微笑んだ。


アズは優しい。

普通の兄妹が分からないので判断できないが、兄とはこんなにも優しいものなのか不思議に思う。


アズの…
金色の髪、緑色の瞳。

私の…、
黒い髪、青色の瞳。


黒髪で青い瞳、

これこそが、ウィッチの血を持つ証。


この国では、私を含め三人しかいないと聞く。

血が繋がっていない寂しさを思い知る――。



「眠れそうか?」

アズが耳元で小さく呟いた。


「うん。」

私は、細く夜空を見上げながら答えた。



白い月、満月。

この血のせいだろうか。
こんな夜には感傷的な気持ちになる。

寂しさ、せつなさが胸に込み上げ泣きたくなる。


乾いた夜風が、
サァ…と岩の切れ間から通りすぎ、背の高い砂ヤシの木々を揺らす。

満月は柔らかに泉を照らし、
水面からは優しい光が、草花の緑をゆらゆらと揺れながら映し出す。



私はそのまま、

アズの腕の中で眠った―――