やめて、と…
張り裂けんばかりの母の悲鳴。
痛みは覚えていない。

視界には、砂のみ。

砂漠が、
私の血で赤く染まるのを見た。


そして…
しばらく経ったのか、気が付くとそこには誰の姿もなく、
母を探して歩き、

このカオスの泉で、
泣きわめく私は発見されたらしい。


全てを正確には覚えていない。
記憶の断片を後から繋げた。



当時、この街も戦に巻き込まれ、ほとんどを灰にされたそうだ。

その戦で、アズもまた母と妹を亡くしたのだと後から聞いた。


だからだろう…。

国王は私を引き取り、本当の娘のように思ってくれたし、アズも城の皆も私を可愛がってくれた。

そして、亡くした妹の名前を私にくれたのだった。


あれから、
もう15年…



「アイリ!!」

――ビクッ…

目を開けるとアズの心配そうな顔があった。


「お前、またうなされてたぞ…」

「………ごめん。」

アズが私の髪を撫でた。

よく、あの時の夢を見る。
その度にうなされるらしく、それを知っているアズは何も言わずに私の髪を撫で続けた。

月の位置が高い。
…まだ夜中だ。
私は大きく深呼吸する。