固まる手に、いつもよりも疲れる肺活量。
だけど一秒一秒、終わる一小節はもう戻らない。
誰かのミスを耳で感じていても、出来る限りの力を出すだけ。
忘れがちな【楽しく】というモットーが、ようやく頭に浮かんできて身体が軽くなる。
次の小節は翼といた時にずっと練習していた箇所だ。
「コンクールが終わったらさ、まっすに告ってみるよ。」
頑張れ、翼。
頑張れ、私。
ねぇ翼。私ね、ここの部分いつも失敗してリハーサルでさえ上手に吹けなかったんだ。
二回目だったよ。成功したの。
今ここにいるステージの上と、
翼といたあの時だけ。
もう一度、聴かせてあげたかった。



