景子が立って私に背中を向けて歩いて行く。
「私!景子のこと嫌いじゃないかも!!」
大きな声で景子に言ってやった。景子はチラッと振り向いて、
「私は美紀のこと好きじゃないから。」
フンとまた憎たらしい態度を取って、廊下を歩いて教室に戻っていった。
景子は私の名前を初めて呼んだ。
アンタ呼ばわりされていたけど、今日初めて名前を呼ばれた気がする。景子の不器用さがわかり、そして翼の想いを尊敬した。
皆それぞれ必死なんだ。
好きなの止められない気持ちはわかる。
嫌な現実から目を背けてしまえば簡単なのに、必死にもがいて前を見る。
ずっと好きでいられることは、
強いことかもしれない。



