私、杜若 結衣(カキツバタ ユイ)は、

ついこの間中学を卒業したばかりだった。

中学の3年間というのは、長いようで短く、あっという間に過ぎて行った。

数人程度の友人達と、それなりに楽しく過ごせた日々だった。

そう、それなりに楽しかった・・・はず。

そして私は、市立の高校に行く・・・予定だった。

そう、予定だった。

新学期の一週間前に、いきなり引っ越すことになったという事件が起きなければ、

その予定の通りに、市立の高校に通っていたのかもしれない。

なんでも、一度離婚し、女手一つで私を育てた母が、再婚することになったらしい。


母が幸せになるのなら、別に構わないんだが。

一週間前に再婚を決める母はどうかしてると思うのは、

私だけだろうか。



そして、そんなこんなで今日、私は

星香学園、高等部に入学する事になる。

正確にいうと、転校だ。

が、


「足が・・・う、動かないぃ・・・」

そう、学園への第一歩(校門)を踏み出そうとするのだが、

ガクガク震えて足が動かない・・・。

・・・こんなんで私は、やっていけるのだろうか・・・。


「もうやだ、帰りたいです・・・」


もう、この際帰ってしまおうか。

なんて考えたが、

母の般若のような姿が目に浮かんだので、やめておいた。

・・・どの時代でも、お母さんって怖いな・・・。






「・・・よし」


決意して、一歩踏み出す。




この選択が、私の生活を狂わせる事になるとは、知らずに。