お願いだから、抱かないで




「はぁー」


広すぎるベッドにダイブして、目の前の写真たてを見つめる。


あたしと綾斗くんで写ってる、体育祭の写真。


前はこの写真を見るだけで嬉しかったのに。


写真たてを静かに伏せて、ベッドから起き上がる。


特になにをするわけでもなく、ぼーっと焦点の合わない瞳を空中に泳がせる。


お父さんは元俳優、お母さんはモデル。

その血を引いたあたしは、昔からちょとだけ特別扱いを受けていた。


「お母さんとお父さんの子なんだから、ちゃんといい子になるのよ。」


何度も何度も言われ続けて、あたしは自分なんか表に出せなくなってた。


週一で親が帰ってくればいいほう。


ただ、帰ってこないのは分かってるから。

絶対期待なんかしない。