お願いだから、抱かないで




だけど、いざとなるといくら探したって言葉は出てこない。


「てか早く行こうぜ」


俯いてると徹也が興味がない、と言った雰囲気で反対方向に歩き出す。


さやちゃんも小走りで徹也を追いかける。


残されたあたしと綾斗くんは無言で二人を見つめた。


「ごめんね。勝手にあんなこと言って」


二人の影が見えなくなってから、綾斗くんが唐突に呟いた。


「ううん。大丈夫」


なにが大丈夫なのか分からないけど、とりあえずそう言った。





これが徹也と喋った最後だった。