お願いだから、抱かないで




聞き覚えのある声に後ろを振り向く。


そこにいたのは徹也





…と女の子。


「お前、なにしてんの。んなところで」


徹也が話かける。


となりにいる女の子は…誰?


あたしには関係ないことなのに、気になる。


「なにって…映画観にきたんだよ」


表の顔で話かける。


あたしが女の子に目線を向けると、女の子はあたしを睨む。


きっと徹也が好きなんだろう。


……て言うか彼女?


「徹也ぁ…行こうよ」


一人で考えていると、女の子は徹也に腕を絡ませて上目遣いで徹也を見つめる。


「じゃあ…あたしは行くね」


なぜかこんな光景見たくなくて、あたしは走ってその場を後にした。


徹也がなにか叫んだ気がしたけど、振り返らないで走り続けた。