海と桜の奏 ~Pure・Harmony~

「卓磨ぁーー?お前……「シッ……」」


話しかけた虎を俊哉が止めて、静まり返る室内。


オレはゆっくりと目を開けて、鍵盤を押した。


ポーーン…


演奏が部屋中に流れ出し、周りの音が聞こえなくなった。


唯一聞こえるのは、オレのピアノの音だけ。


外の鳥の鳴き声も、車が走る音も、不思議と聞こえなかった。


神経の半分を楽譜に集中させつつ、もう半分は後ろに座っている桐生に向ける。


どうしてもこの曲は――――…桐生に聴いて貰いたかったから。


なぁ桐生………


ちゃんとお前にこの音色……届いているか?