海と桜の奏 ~Pure・Harmony~

壁に両手をつき、ガックリと項垂れるオレ。


桐生が後ろでアタフタしているのを、気配だけで感じていた。


「あ……桜土君………私の歌、そんなに上手かったかな……?」


「えっ………?」


後ろを振り向くと、制服の裾を握りしめて俯く桐生の姿。


まだ顔は赤いけど、ソレはオレに抱きつかれた事だけが理由じゃ無さそうだ。


「私、アイや小梅にも“凄い上手い”や“歌手になれる”とか言われて来たけど……自分じゃよく分からないんだ…本当にそんなに上手いのか………」


桐生はちょっとだけマユを下げ、不安そうに言葉を紡ぐ。