あたしが言葉を発する前に、鳴り響いた笛の音で集合がかかったナツメはさっさと背を向けてバスケ部の中に戻っていく。
……結局一緒に帰るの?
ぼけっと見てる間にダウンが始まり、“あたしのことを心配してくれた”のか“自分が襲われることを心配した”のか、訳がわからなくて混乱してしまう。
いや、ただ単に、家の方向が一緒だからって理由だろう。
もしかすると何かと理由をつけて夕飯を奢らせる気なのかもしれない。知らない土地に置き去りにされるかもしれない。警戒は必須だ。
「やっぱ、1年の中じゃダントツかっこいいよね、ナツメくん」
……ナツメ?
なんて考えていれば、不意に聞こえてきた声は数メートルの間隔を空けて横に立つバスケ部のマネージャーさんのもので、ナツメの名前に無意識に反応してしまった。
「だねえ。話しかけても素っ気ないし、ちょっと怖いし冷たいし無視されちゃうときもあるんだけどー、」
「そこがまたいいよねえ!」

