「聞こえて無いよ」
「気にしたら負けです」
ジンが喋り終える内に左手の治療が終わったらしく、肉が焼ける不愉快な臭気もまったく気にせず、彼はその手袋を無くなった足先に向ける。
火を付ければ、また悲痛な獣の鳴き声が夜闇の空いっぱいに広がった。
この近隣に住宅が無いことを非常に感謝しよう。
「今日はたまたま俺とそこの二人が警備に加わっていたわけだが、この二人にはあらかじめ『背後に回って銃なり剣なり突き付ける』ことを教えていた。
お前は結果、此方の指示に従わなかっただろう。
そうすると思った。
何故ならお前は死ぬことが怖くないからだ。
普通の人間は生死の境目に人がいれば、逆転を考えようと考えまいと取り敢えず相手の指示に従うものだ。
海から上がってすぐに見つかることは全くの予想外だろう。
理性的な人間はまず時間を稼いで色々考える。
しかしそれをしない人間は、すなわち野性的で獰猛でまったく人外な思考と力を持ったまさしく凶悪犯たるお前ということ、だっ」
ぎり、と身体が軋む音がした。
「ぎゃあっ、あ、アアアアアア!!!!」
「おお、そろそろ声が枯れてきた」
一応のこと、彼の表情はまったくもって爽やか青年の色を落していない。


