その速さは人外的。
獲物を取りに急降下する隼の如く、目にも捕えがたいスピードでジンは獣に近づき、残る片足を放した。
驚愕して声も出せない獣の胴体が地につく前に、ジンは右手で獣の後頭部を鷲掴みにして思い切り石畳に叩きつけた。
「ふぎゃっ!!」
「…ああ痛いか、流石に顔面は痛いよなあ」
歯が何本か折れて辺りに散らばった。
けっこう寂しくなった大きな口を、一度晒されて再び煉瓦に叩きつけられた。
「…ちょっ、ジンくんなにやってんですか」
「安全治療」
にっこりと笑って応える彼は、今まで見たことのないくらい爽やかな青年の顔をしている。
う…う、とうめきを上げる獣の背中にどっかりと腰を降ろし、彼はズボンのポケットに手を入れて布の塊を取りだした。
それは黒い革の手袋である。
指が貫かれてあるそれを、左手だけに嵌めて、彼は獣の不能になった四肢を品定めのように見まわした。
「右肩に弾丸、左手は切断と、左足は無いし右足は刺されてあるんだね」
まるで医師のような口ぶりである。
「よし、じゃあ早速」


