「お前ェ、お前が俺のこと探し出しやがったのかァ?
嬉しいぜェ、俺は元来他人と趣味趣向があわねぇタイプでよォ、俺の考えてくれること解ってくれたなァお前が初めてだ」
「それはどうも、非常に不愉快だが」
ジンはスーツの胸元から懐中時計を取り出して蓋を開いた。
時刻はもちろん深夜である。
「…ふん、少々時間が無い。
説明はお前の治療を行いながらにしよう」
ジンはスーツに時計を仕舞い、上着を脱いで背後のレインに被せた。
ついでにネクタイも取り、ぽいっと捨てる。
第三ボタンまで外すと、その貧相な胸板が黒いシャツの間から覗き、行動の意図が読めず獣は頸を傾げた。
「お前は生きて刑務所にぶち込んでやる。
ほら、早くしないとお前、出血多量で死んでしまうぞ」
「ハハハハハハ、そりゃあラッキーだァ!!」
獣は、早く、早く死に急ぐかのように残った足を軸にぶらぶらと身体を揺すった。
血が噴き出す。
「…わかってない」
ジンは哀れむように、神父のごとく穏やかな瞳を一瞬だけ見せて、剣を構えた。
「お前はわかってない。
死ぬことの怖さも、生きることの怖さも。
そんなんだから獣になり下がるんだ」
独り言をつぶやいて、石畳を蹴った。


