なおも獣は笑っている。
笑いながら、しかしドクドクと流れ出す自身の血に興奮さえしているらしく、彼らの会話中ずっと傷口をあちこち眺めまわしていた。
「ハハハ、アッハァ、俺が捕まる?
構わねェよ別に」
「…だろうな」
それは決して無鉄砲な強がりではないことを、彼は知っていた。
最初からこの獣に逃げるか否かの意志など無い。
あるのは、快感を得たいか否か。
そういう野生の本能に身を任せていたからこそ、警察にはこの男の行動の意図がまったく予想できなかった。
彼は昼間に好んで罪を犯す。
それは何かしらの意図があるからなわけではなく、単に、殺した男の、犯した女の哀れな姿をはっきり見たいからだ。
できるだけ見たいからできるだけ昼間にやる。
気が向いたなら夜にだって狩りはするさ。
こんな獣の気まぐれな行動パターンを読もうとしてまんまと外れた警察が賢過ぎて馬鹿なだけ。


