「んじゃ、今度こそ行ってきます」
「今度こそ行ってらっしゃい」
私は玲に背を向け、ドアから手を離す。
ドアが閉まる間際「気を付けろよ」とらしくない口調で、しかも普段より少し低い声で呟いた玲の声は、既に歩き出していた私の耳には届かなかった。
家を出て暫く歩くと、ようやく目的地の黒珱高校が見えてきた。
まだ公開時間になっていないのか、校門には多くの人が寄り集まっていた。
そのほとんどは学生服を着た学生で、なんとなく全体がソワソワしているように見える。
特に女子なんかは興奮したようにはしゃいでいて、鏡を取りだし念入りに自分の身なりをチェックしている人も多々。
中には校門の所の石に座り込んで、メイクしちゃっている女子もいた。
いったい何があるというのか…
というかメイクなら家でやって来なよ。
あそこには居たくないな…ここで待とう。
あの人ごみの中には入りたくないし、なんとなくいちゃいけないような気がしたので、私は人だかりから少し離れた所の柵に寄り掛かり待つことにした。
