それは手入れもろくにされていない畑や荒野や雑木林以外周りに何もない、古く寂れた倉庫での出来事。




周りの何もない平穏さとは裏腹に、倉庫内は荒れていた。
十人以上の男達が血を流し、重なり合うように倒れている。




その中央に佇むのは、紅い瞳をもつ傷だらけの“白い獣”
それは、その整った顔に笑みを湛えククッと喉をならした。







「あらら」







閑な空間に唯一響く、どこか自嘲染みたその声は暗い闇へと吸い込まれていく。


白い獣は血に染まった自分の手をジッと見つめた。その血は誰のモノであるのか、もうわからない。己のモノなのか、他のモノであるのか。



「――っ、……」



天を仰ぎ、何かを吐き出すように息を吐いた途端、白い獣はスイッチが切れたようにガクリと崩れ落ち、
そのまま息絶えたように深い深い暗闇へと、意識を手放していった。