ヒトメボレ




夢だと思った。



涙は次々に溢れて止まらない。



だけど、涙を拭うとはっきりする視界に映るのは、まっすぐ私を見る入江くんだけ。



夢じゃ、ないの……?



「さっき、名前呼ばれた時めちゃくちゃ嬉しかった。


“入江くん”なんていろんな人が呼ぶのに……相沢に呼ばれただけで特別な気がした。


……それくらい、うん。


てかさ、俺から言わして。


相沢が、好きです。


……俺と付き合ってください」



視界の隅にある花壇の花とか。



見慣れたはずの自販機とか。



私達の間を吹き抜ける風とか。



すべての色が、一瞬にして変わった気がした。



きっと、……ううん。



私今、世界で一番幸せだ。



「――はいっ」



涙を拭って、今の最大限の笑顔を向けると、入江くんも同じように笑ってくれた。



ずっと、欲しかった笑顔が、今すぐそこにあって。



それは、私だけに向けられていて。



ずっと、ずっと、ずっと。



好きだったの。



……違うね。



これからも、好きになっていく。