ヒトメボレ




「…あの」

「っ、はいっ!」



勢いよく返事をしたものの、急に怖くなった。



フラれたっていいなんて強がりで。



言わなきゃ良かったかもなんて後悔もして。



不安の混じったドキドキが私を襲う。



「……もしかしたら、信じてもらえないかもだけど」



今の今まで吹いていた風が、何事もなかったようにピタッと止んだ。



静まり返る中庭。



まるで、学校が入江くんの言葉を待っているよう。



「――――俺も、好きです」



息が、出来なかった。



最初は、正直何を言っているのか理解出来なくて。



だけど、私を見る入江くんの目は嘘など言っているようには見えなくて。



ぼんやりとしていた頭がだんだんはっきりしてきたかと思うと、堪えていた涙が溢れそうになる。



「うそ……」

「…ほんと。


てかね、こんなことを言うのもなんだけど……相沢の気持ちに前から若干気づいてたんだ。


最初は『きっとすぐ変わるんだろうな』って思ってた。


けど、自分で言うのもすげー恥ずかしいけど……


相沢の俺を見る目は、他の奴を見る時とちがくて、目が合うたび『まだ想ってくれてるのかも』って思ってて。


……気づいたら、いつも相沢のこと探してたし、『そうなのかな』じゃなくて『そうであって欲しい』って思うようになってた。


俺も、相沢以外の女子なんて目に入らない…です」