ヒトメボレ




何度も何度も噛んだ。



途中で何言ってるかわかんなくなった。



だけど……言った。



私の“今”の気持ち。



終わらせるんじゃなくて……ここから始めたい。



フラれたっていい。



きっとそれくらいじゃ諦めるなんて出来ないから。



「――…ありがとう」



入江くんは、静かにそう言った。



また顔を上げると、視界に入るのは前髪をクシャッと握り赤くなった入江くんで。



こんな表情初めて見た。



胸がギュッと苦しく締め付けられて、どうしようもなく好きだと思う。



本気で、この人以外好きになれないと実感する。



次の言葉は、私を突き放すかもしれない。



それでも、好きにしかなれないなんてどうすればいいんだろう……。



入江くんが何も言わないから、私も何も言わずに待った。



ほんとは今すぐ逃げ出したいくらいだけど……どんな形でも返事を聞きたかったから。



それにもう少しだけ、一緒にいたかったから。



長い沈黙が、私達の間を流れた。



その間耳に入るのは、いつもより強めな風の音と私の心臓の音だけ。