「いやぁ……こういうのは、私、似合わないって……」

「そんなことないですよぉ~、かおる先輩、すごく似合ってますよ!」

フィッティングルームの鏡で自分の姿を見ながら乗り気じゃない私に、理子はカーテンの隙間から顔だけを中へ突き出して反論した。

「こういうのはさ、それこそ理子みたいな可愛い子が来た方がウケ良いと思うよ……私みたいな……場違いだよぉ。」

スカートのファスナーを下げながら、私は言った。

「ちょっと!先輩何してるんですか!先輩はこれを着て出るんです!自信持って下さいっ!めっちゃセクシーですって!お似合いです!」

覗いていただけの理子は、慌ててフィッティングルームに駆け上がってきて、スカートを脱ごうとする私を阻止しながら言った。

「ほら、帽子なんかかぶっちゃうと……
ヤバ~い!やっぱりこの衣装は先輩じゃなきゃ!」

理子は私に青いフェルト地の帽子を私にかぶせ、鏡越しに私を諭した。

「はいっ!完成で~す!ね、先輩、『逮捕しちゃうぞっ』て言ってみて下さいよ~。」

「馬鹿っ!調子に乗りすぎるんじゃないよ!」

「きゃあ!婦警さんに怒られちゃったぁ。捕まる前に逃げちゃえ~!」

きゃっきゃと言いながら理子は、カーテンを開け、パンプスをつっかけて走って出て行った。


――やれやれ。押し切られたか……。

目の前の鏡に映るは、警官服を身にまとった自身の姿。
婦警さんがかぶる帽子、そして婦警さんと言えばこれ、って制服……。
しかもこれ、心なしか、スカート短くない?!……いや、確実に短いっ……!

膝よりも十数センチも上にあるスカートの裾を、懸命に下へ下へと伸ばす。

あぁ……こんなの、何にも代え難い屈辱。恥ずかしいっ。
しかも……多分、また太った!
横を向いて、鏡でお尻のラインをなぞって確認する。