「……へ?
それだけ……?」


呆気にとられた様子ののんちゃんは、ギ……と、前の席のイスを引いて、ドスッと座った。


「信じられない。
心優、その人の名前は?」


「聞いて……ない」


「なんで?」


「え……。
なんでって……。
制服……返さなくていいって言われたし」


「心優……。
いくら返さなくていいって言われたって……。
助けてくれた人の名前くらい……。
……って、その前にお礼は?」


「……してない」