「えっと、私の秘書課へ移動するという話は本当でしょうか?」
「あぁ。
冗談でそんな仕事に関係することを命じたりしませんよ。」
ですよねー。
でも、 なんで私なのかしら?
「あの、なぜ私なんですか?」
「私が気に入ったから。」
は?
意味わかんないから。
「それに、仕事、総務課で一番いい。
部長なんかいらないくらい。」
「あ、ありがとうございます?」
なんか、誉められた?
「でも、一番の理由は気に入ったから。
それに、憂鬱でしかない仕事に希望を持ったから。」
そんな大役はしてないと思いますけど…。
「秘書はいなくていいと思っていたから秘書課なんて本当は作っていないんだよね。
だから、この部屋にもう一つデスクを置くから、そこで一緒に仕事をしてね。
よろしく、“南”。」
最後、ニッコリと優しい笑みをくれた社長。
でも、その中には何か別の感情が入っているように見えて。
だけど、そんなことより、
「なんで呼び捨てなんですか?」
「俺がそう呼びたいから。」
なんか文句ある?
軽く脅してますよね…。
「はぁ…。分かりました。
社長は「瑠希。」
はぇ?」
なんか、気が抜けて間抜けな声が出てしまった。
「瑠希って呼んで?」
「いやいやいや。
そんなの、ムリですよ。
社長は社長ですよ。」
何を言ってるんだ。
「そんなんだったら、俺、今すぐバラしちゃうよ?
俺に文句付けたって。」
帰る課はどこにあるかな~
なんて笑いながら言ってくる。
なんだこれ。
職権乱用じゃないか。
「分かりました。
瑠希ですね、了解です。」
「敬語も外して。」
ムリだと言おうとすると、また脅してきた。
「…分かりました。」
「ありがとう。」
そう言ってキラキラとした笑顔を見せる。
そう言えば、
「私、瑠希の苗字知らない…。」
「あ~そっか。
鳴橋瑠希。27歳。独身。」
なんだか、いらない情報まで入ってきた。
