こ…恐い…っ
「おい…女」
耳元で、低い声が響く。
「は…はい…」
吐息がかかる。
「もう一度聞こう。…答えなかったら…殺す…」
もう、耳に唇があたるくらい近くでささやかれた。
肩がビクッと震える。
恐い…っ
その辺のヤンキーなんかよりずっと。
「貴様、人間か?」
あたしは、意を決して答えた。
「は、はい」
人間だって証明しないと、きっと本当に殺される。
しかし
首に立てられた爪は、もっと強くあたしの肌に押し当てられた。
「痛いっ!」
思わず声を漏らすあたし。
首からは、ツーッと一筋の血が流れた。
「人間…だと…?貴様、なぜここに来た」
だんだん後ろから聞こえる声の様子が変わってきた。
「人間…だと…?人間…にんげん…ニンゲン……ヴヴー……グルルル…」
…えっ?
うなりごえ?
ついには、男の声が、犬のようなうなりごえに変わり、爪が首から離れた。
あたしはそのすきを見て、ぱっと身を翻した。
「狼っ!!!?」
そこにいたのは、恨めしそうにあたしをにらみ、地鳴りのような声で唸る、
あたしの背丈よりも大きな、白い狼だった。
「なんでっ!?」
あたしがそう叫んだ時だった。
「ヴヴヴヴ…グルル…ガゥぅ…っ」
突然、狼がおそいかかってきた。
鋭い爪が怪しく光る。
「きゃああああ!」



