「んなこと言って、あんまし千鶴ちゃん困らせないでよ」
野々宮は肯定も否定もせず、自分の器と箸を取りに行った。
千鶴としては、なぜ否定しなかったのか問いただしたい気分だがそんなことをするわけにもいかず、ヘラヘラと力無く笑うだけだった。
「よっしゃ、流すか!」
脚立に乗った小山が声をかける。
百瀬はやはり子どもみたいに喜んで竹に寄っていく。
千鶴も自分の器を取りに行こうとしたら、野々宮が二人分の器と箸を持ってきていた。
「はい、千鶴ちゃんの」
さり気ない気遣いに小さく胸が高鳴った。
「ありがとうございます」
器と箸を受け取った千鶴に、野々宮はさらに近づいて耳打ちした。
「あの人、年上とか初対面とかお構いなしに容赦ないから食べ負けないでね」
それだけ言って、自分も楽しそうに輪に加わる。
千鶴もそれに続くが、野々宮から耳打ちされた左耳だけが赤く熱を持っていた。

