ライブに誘われただけで浮かれていた自分が嫌になる。
そしてなにより、こんな噂一つに惑わされている自分が情けない。
そんなの、根拠なんてないし、二人でいたところなんて見てないじゃない。
それを口にするのは無理でも、心の中でさえも思えない自分が嫌だ。
「でもさぁ、実際二人でいたわけじゃないんでしょ?
友達と行ってただけじゃないの?」
結局、千鶴が言えも思えもしなかったことは聞いていたその他大勢の一人が言った。
少なくともこのグループの中で一番野々宮を知っているはずで、興味本位で俎上に乗せている人たちとは違うはずなのに、他の人が出した意見に同意することしかできない。
そんなの、他の人たちと何が違うのか。
「それがですねー、お電話聞こえちゃいましてー」
「それ盗み聞きじゃないの」
「いや、人多すぎて大声になってたんだよー」
最低だ。
それが事実だとしても、偶然聞こえてきた内容だとしても、それをお昼休みの話題にして友達に言いふらすなんて。
そしてそれを黙って聞いているなんて。