確かに野々宮が持っていたチケットは二日分。

残った分を誰と使おうと野々宮の勝手だ。


「でも田中先輩ってかなり美人だよねー。
美男美女って感じ」

「そう言えば野々宮先輩って前も可愛い先輩と付き合ってるって噂あったらしいよ」

「じゃあ、面食いかー。残念」


聞きたくなくても聞こえてくる会話が恨めしい。

そんなこと聞きたくない。知りたくない。

ただ嬉しくて楽しくて、それだけでよかった。
野々宮と噂の恋人なんてどうでも良かった。

そう思いながらも、ふと思い出されたのはあの時。
野々宮を、初めて靴箱で待っていたとき。

あの時現れた女の人は確かに美人だった。

--思い当たるじゃん。見てるじゃん。

見ない振りをしてもいるものはいるのだ。
彼女だろうが、そうじゃなかろうが、噂になるくらい親しい人が野々宮には。


気づかない振りなんか、意味ないのだ。