「それにしても、人多いねー」
「そうですね。これ全部ライブ行く人たちですかね」
思わず手をつないでしまうほどの人混み。
恥ずかしい、とか照れる、とか言って手をつなぐことを躊躇する余裕もない。
「時間帯的にそうだろうね」
「千鶴、この辺に住んでなくて良かったぁ。
近所迷惑極まりないですよね」
「あはは。確かに
俺が住むならここは絶対やだなあ」
たわいもない話をしながらゆっくりと歩く。
その時間が楽しくて切ない。
これだけの人がいるライブのチケットを二枚もしかも土日と二日分も取ることなんて可能なんだろうか。
自惚れかもしれないけど、他に理由があるかもしれないけど、
もしこれが千鶴のためだったら……。
考えただけでとてつもなく嬉しかった。

