電車に乗っていても思ったが、人が多過ぎる。
ホームに降りるとあっという間に人の波に飲み込まれてしまった。
「千鶴ちゃん、こっち!」
背がさほど高くない千鶴はすぐにはぐれて見失われてしまう。
そして野々宮も背が高い方ではないのではぐれたら見つけ出せる自信がない。
野々宮に呼ばれるままに近づいて行くと、また何の違和感もなく手を握られた。
「こりゃ早く出ないと潰れるな」
背伸びをしながら頭を掻いて、野々宮は千鶴を見下ろした。
「あ、くそ。今日千鶴ちゃんちょっと背ぇ高い」
「え? あ、ヒール……」
「女の子はそういうのずるいよなぁ」
確かにどちらもそんなに背が高い方ではないが
推定165cm以上170cm未満の野々宮と
小数点以下切り上げでようやく154cmの千鶴では
ヒールを履いてもまだ千鶴の方が背は低い。
千鶴も実はそこはきちんと考えて履いてきている。

