遅刻とか失礼だなぁ、と思いながら全力で走って十分ほど。

待ち合わせは学校近くの駅。

千鶴的には全力疾走でも、他の人が同じ道を全力で走ったら五分もかからないだろう。

端的に言って千鶴は足が遅い。


「すみません、千鶴、遅刻……」


遅くても必死感満載の千鶴を見て、野々宮が慌てて背中をさする。


「いやいやこっちは大丈夫だから!
それより大丈夫じゃないのは千鶴ちゃんでしょ!
大丈夫なの?」


「……大丈夫じゃないです」


「とりあえず電車来ちゃうから乗ろうか。こっち」


息切れしている千鶴の息が整うのも待たずに電車がホームに入ってくる。


そのどさくさに紛れて繋がれた手に、千鶴はまた鼓動が速くなった。


いや、これは千鶴が1人だと危ないからつないだだけなんだから。

勝手な勘違いをしないように自分に言い聞かせた。