「そうじゃないですから」

ただ、あんなふうに何でも遠慮なく話せて
言葉がなくても空気で分かりあえるような
そんな友達がいることが少し、羨ましかっただけ。


今まで、クラスの友達関係を見てこんなことを思ったことなんてそう多くない。


でも、この二人は今までみたどんな人たちよりも

千鶴の憧れになった。



「うん、よくわかんないけど
なんか話したいことあったら言ってよ。
聞くから。
言いたくなかったら言わなくていいし。また今度でもいいよ」


小山は特にカッコつけた様子でもなく、思ったことをただ言っただけのように見える。

声のトーンも、歩く速さも変わらない。

そんなふうに何気なく、こっちの気持ちを汲み取ってもらえて、

自然に「話したかったら話しなよ」って言われたことなんてあったかな。


いくら探しても、そんな人の顔を思い出せそうな気はしなかった。