「ノリ、千鶴ちゃんいいの?」 一度だけ言ったことがある。 答えた野々宮の顔は、どこか寂しげだった。 「良いも何も……。あんな泣かれたら、引き止めらんないでしょ」 「泣かれたんだ?」 野々宮はまあね、と笑う。 野々宮は器用だ。 器用に何でもこなしすぎる。 頑張っているところは誰にも見せないし、弱音を吐いて誰かに頼ることもしない。 たまには、自分で解決できないような大きな悩みにぶち当たって、頼ってくればいいのに。