「何で、こんなに急いで出てきたんですか」
野々宮は何も言わない。
ただ、自分の手や足に視線を落としているだけだ。
「田中先輩に会いたくなかったんですか。千鶴が一緒だったから?」
「違うよ」
いつもの優しい声じゃない、投げやりでぶっきらぼうで低い声。
「じゃ、何で? 田中先輩が出てきたのと野々宮先輩が慌てて学校から出ようとしたのは偶然ですか?
自分が田中先輩と噂になってるって、知ってるくせに」
自分から、こんな言葉が出てくるなんて思わなかった。
人と争うのは好きじゃない。
こっちまで消耗するから。
でも、今言わなければいけない気がした。
どうせ、もう言ってしまった言葉を取り消すことなんてできないんだから。
後戻り出来ないのなら、自分の思うところまで行ってみよう。
初めて、そんなふうに思えた。

